ＢＧ、あるいは死せるカイニス / 石持浅海

・全ての人が女性として産まれ、その一部が男性化する世界が舞台のSFミステリ。
・タイトルにもある「ＢＧ」とは何かという点と、殺人事件の謎を同時進行で追っていく。
・基本はハウダニット。若干弱い気もするが、本格らしく端正にまとまっている。ヒントが示されながら進むのでわりとわかりやすいかも。

まぶた / 小川洋子

・同じ新潮文庫の『薬指の標本』と似た雰囲気の短編集。
・きれいなおちが付く話は少なくどれも短いけれど、強烈な印象が残る。一瞬を切り取って一つの絵に閉じ込めたかのよう。
・ともすれば悪夢にも思える不思議な空間なのに、よほど現実らしく感じさせる。

フィッシュストーリー / 伊坂幸太郎

・最初期から中頃までの特に繋がりが無い中短編集。
・内容はそこそこ。おなじみ黒沢が登場すると面白くなってくる。
・でもやっぱり長編の方がいいかも。

晩夏に捧ぐ / 大崎梢

・シリーズ第二弾は成風堂ではなく、地方の老舗書店が舞台の長編。
・事件も大掛かりになり、二十七年前の殺人事件と現代の幽霊騒ぎ。
・引っ張りに引っ張った謎解きがたいしたことなく、あぶなっかしい。
・もうちょっとちゃんとした推理ものにして欲しかった。本屋の描写が一番楽しめた。

片耳うさぎ / 大崎梢

・著者四作目で初のシリーズ外作品。主人公は小学生。
・舞台は田舎の旧家。隠し階段に隠し部屋、わらべうたの謎と、なんだかクラシカル。
・殺人事件が起こるわけでもなく解答も予想がつくが、そこへ至る過程がハラハラドキドキ。
・後半はやや駆け足。

おがみむし / 遠藤徹

・おなじみ七戸優による表紙が目印の三冊目。『くくしがるば』から改題して文庫化。
・表題作はすんなりとまとまったホラー。文字通り心を奪う話。
・もう一つの話、『くくしがるば』はとりあえずホラーではなさそう。
・言葉遊びのような、オヤジギャグのような、酔っ払ったいきおいで書いたかんじ。面白くないわけではないが斜め上を行きすぎ。